選択肢をたくさん提示した方が満足してもらえるか?
皆さんは、何かを選ばなくてはいけないとき、どのくらいあったら満足しますか?
あるいは、どのくらい提示すると喜ばれると思いますか?
たくさんあったらあっただけ、迷う喜びを感じられるでしょうか?
今回は、選択肢について考えてみたいと思います。
私ども広告に携わる者は、”提案”ということが常についてまわります。クライアントから具体的にこういう言ことをしたい、こういうものを制作したい、と具体的に言われることはかなりまれであり、目的や課題を提示され、それを広告施策や制作物で解決するための提案というものをします。
つまり、逆に言うと広告業界で提案力に乏しいというのは、少々生き残るには厳しいということですね。
さて、その提案。どのくらいの数を提案したらよいのか?ということです。
これだ!という渾身の1案か…
どうだ!と、数が多ければ多いほどよいか…
これを心理学的に考えてみたいと思います。
結論、ありすぎたら決めれない

選択肢に関する理論がいくつかあります。
そのうち似たようでちょっと違う2つの概念をご紹介します。
Paradox of Choice(選択のパラドックス)
選択肢が増えることが必ずしも満足度を高めるわけではなく、むしろ選択肢が多すぎると、選ぶことが難しくなり、最終的には後悔や不満につながること。
例えば、あまりにも多くの製品から選ぶとき、選択した後に「他の選択肢にした方が良かったかもしれない」と感じることがあります。実はこの後悔がストレスまでをも生むことがあります。
Choice Overload(選択過多)
選択肢が多すぎるために、選ぶこと自体が難しくなり、最終的に選ばないか、または適当な選択をしてしまうこと。
これらの元となるのはシーナ・アイエンガーという心理学者の有名なジャム実験があげられます。
シーナ・アイエンガーの実験の概要1)

実験の概要
フィールドと実験室において、以下のような実験が行われました。
- デザイン:
- 参加者には異なる数の選択肢が与えられる2つの条件が設定された。
- 条件1: 少ない選択肢(例:6種類のジャム)
- 条件2: 多い選択肢(例:24種類のジャム)
- 参加者には異なる数の選択肢が与えられる2つの条件が設定された。
- データ収集:
- 参加者はジャムを試食した後、どのジャムを購入するかを決定し、その際の購入意欲や満足度についてアンケートを実施。
- 作文の課題:
- 参加者には、試食したジャムの中から最も好みのものを選んだ理由を300字程度のエッセイとして書くよう指示された。
結果の概要
- 条件1(少ない選択肢): 試食して購入した割合:12%…参加者はより多く購入し、選択が容易で、エッセイの内容もポジティブな感情に満ちていた。
- 条件2(多い選択肢): 試食して購入した割合:1.8%…購入する確率が低下し、選択時のストレスや迷いが増加。エッセイでは選択の困難さや後悔が表現されることが多かった。
この実験からは、選択肢が多すぎることが人々にストレスを与え、選ぶことを難しくし、最終的に満足度を低下させるということです。
このように選択肢が多ければ多いほどよいというわけでなく、逆にネガティブな感情にさえつながることも示されています。
まずは3つ、多くても5つ
選択肢はおおよそ3つから多くても5つが望ましいと思われます。
しかしながら、数がこの範囲だったら決められやすいかと言えば、それも違うと思います。
提案はあくまでも、狙いがあってこそ。課題が提示され、それを解決するためにはいくつかの手法がある。その手法に応じた提案数が3~5つということであり、ではこの課題に対して適切な解決手法が提示できているかというのは別の問題です。
一番重要なのはこの解決手法が的を得ているかということになります。それが最終的に3~5つまでに絞りこむということを留意いただければ、よりよい提案につながるのではないかと思います。
ご参考になれば幸いです。
なお、こちらの選択肢に関しては名著2)がありますので(英語ですが)よろしければご参考になさってください。
1)Sheena S. Iyengar & Mark R. Lepper (2000) When Choice is Demotivating: Can One Desire Too Much of a Good Thing
2)Barry Schwartz The Paradox of Choice: Why More Is Less

